外国人の患者さんの問診は、受付の負担がもっとも大きい場面のひとつです。無料で使える多言語の問診票もあれば、タブレットやスマホで答えてもらう方法もあります。それぞれの特徴と、選ぶときに比べるべき点を整理します。
無料で使える多言語の問診票
まずは、公的機関や公益団体が無料で公開している問診票です。紙に印刷して使います。
| 提供元 | 言語・診療科 | 利用条件 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 「外国人向け多言語説明資料」 | 13言語(英語、中国語簡体字・繁体字、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ウクライナ語、ヒンディー語、インドネシア語、ネパール語、タガログ語、タイ語、ベトナム語、アラビア語)、29診療科。2026年7月に一部改訂 | 公共データ利用規約1.0版。出典を記載し、加工した場合はその旨を明記 |
| かながわ国際交流財団・ NPO国際交流ハーティ港南台 「多言語医療問診票」 | 23言語、11診療科(内科、外科、整形外科、脳神経外科、精神科、小児科、皮膚科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科) | 無料。印刷して使う場合は許可不要。営利目的の利用は禁止。ネットやイントラネットでの利用、ホームページへの掲載は申請が必要 |
厚生労働省の資料には、問診票のほかに診療申込書、概算医療費、医療費の請求書・領収書、同意書なども用意されています。まず手元に揃えておくと安心です。
紙の問診票の限界
無料の問診票は心強い味方ですが、受付の実務では次のような課題が残ります。
- 答えが母国語で書かれる:選択肢の部分は対訳で読めても、自由記述は患者さんの母国語で書かれるため、スタッフには読めないことがあります。
- 読み書きが苦手な方もいる:話すのは得意でも、読み書きは苦手な方がいます。厚生労働省のマニュアルは、どの言語の問診票を使うか本人に選んでもらうよう勧めています。
- 自院の質問項目と合わない:既存の様式は汎用的なため、自院で聞きたい項目が足りなかったり、不要な項目が多かったりします。
- 最新版の管理が必要:改訂されていないか、利用者が自分で確認する必要があります。
- カルテへの転記に時間がかかる:回答を日本語に直してカルテに書き写す作業が残ります。
問診の方法ごとの特徴
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 紙の多言語問診票 | 外国人の患者さんがまれ。まず費用をかけずに始めたい | 回答の翻訳とカルテへの転記はスタッフが行う。言語と診療科が限られる |
| 翻訳アプリでの聞き取り | 短いやりとり、日常会話 | 誤訳を確かめにくい。厚生労働省のマニュアルは日常会話に限るのが望ましいとしている |
| タブレットでの問診 | 院内に端末を置いて貸し出せる | 端末の購入・充電・消毒・紛失の管理が必要。来院前には答えてもらえない |
| 患者さんのスマホでの問診 | 来院前やホテルで答えてもらいたい。院内に機器を置きたくない | 患者さんがスマホとネットを使えることが前提 |
| 医療通訳(電話・ビデオ・対面) | 症状が複雑、説明や同意が必要 | 費用がかかる。つながるまで時間がかかることがある |
厚生労働省の令和7年度調査では、タブレットなどの端末を病院として導入しているのは38.3%、電話医療通訳を利用しているのは13.9%でした。問診は端末やアプリで済ませ、説明や同意が必要な場面だけ通訳を使う、という組み合わせが現実的です。
スマホ問診・Web問診を選ぶときの6つの観点
- 対応言語の数:英語・中国語・韓国語だけでなく、自院に来る患者さんの国籍に合うか(タイ語・ベトナム語・インドネシア語・スペイン語など)。
- 回答が日本語で届くか:選択肢だけでなく、自由記述も日本語に訳されて届くか。
- 症状に応じて質問が変わるか:主訴に応じて必要な質問だけを出し、緊急のサインを最初に確認できるか。
- カルテに転記しやすいか:SOAP形式などで、そのまま貼り付けられる文章が作られるか。
- 院内に機器が必要か:端末の購入や管理が必要か。QRコードを貼るだけで始められるか。
- 問診の先までつながるか:保険とクレジットカードの事前確認、会計、英文書類の発行まで同じ流れで扱えるか。外国人患者の受け入れで負担が大きいのは、問診よりむしろ会計と書類です。
DOCTUS VISITORS の場合
DOCTUS VISITORS は、受付に貼ったQRコードを患者さんが自分のスマホで読み取り、16言語の問診に答える仕組みです。院内に置く機器はありません。選んだ症状に応じて質問が変わり、緊急の可能性がある回答はスタッフの画面で目立つように表示されます。回答は自由記述も含めて日本語で届き、カルテ転記用のSOAP形式の文章も自動で作られます。保険とカードの事前確認、会計、英文の診療明細書・領収書・診断書の発行まで、同じ流れで扱えます。
この記事のまとめ
- 無料の多言語問診票は厚生労働省(13言語・29診療科)などが公開。利用条件を確認して使う。
- 紙の問診票は、回答の翻訳とカルテへの転記の手間が残る。
- スマホ・Web問診は、言語数、日本語での受け取り、症状別の出し分け、転記のしやすさ、機器の要否、会計・書類までつながるかで比べる。
よくある質問
Q無料で使える多言語の問診票はありますか?
あります。厚生労働省の「外国人向け多言語説明資料」では、13言語・29診療科の問診票を公開しています。かながわ国際交流財団とNPO国際交流ハーティ港南台の多言語医療問診票は23言語・11診療科です。
Qかながわ国際交流財団の問診票は自由に使えますか?
印刷して院内で使う場合は許可が不要ですが、営利目的の利用は禁止されています。ホームページへの掲載やインターネット・イントラネットでの利用には申請が必要です。最新版かどうかは利用者自身が確認する必要があります。
Q厚生労働省の問診票を加工して使ってもよいですか?
厚生労働省の資料は公共データ利用規約1.0版に沿って利用でき、出典を記載し、加工した場合はその旨を明記すれば加工して使えます。利用の前に厚生労働省の著作権に関するページで条件を確認してください。
Qスマホ問診とタブレット問診はどちらがよいですか?
院内に端末を置いて貸し出す運用ができるならタブレット、端末の管理や消毒の手間を減らしたい、来院前に答えてもらいたい場合は患者さん自身のスマホで答えてもらう方式が向いています。回答が日本語で届くか、症状に応じて質問が変わるかも比べるポイントです。