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未収金対策

外国人患者の医療費未払い、報告基準が1万円に|診療所が受付でできる未収金対策

公開 更新 DOCTUS VISITORS 編集部

2026年4月から、訪日外国人の医療費の未払いを医療機関が国に報告する仕組みで、登録の基準が「累計20万円以上」から「累計1万円以上」に引き下げられました。初診料と検査代だけでも届く金額です。この記事では、制度の要点と、診療所の受付で未払いを防ぐための具体的な対策を、厚生労働省の資料をもとに整理します。

訪日外国人受診者医療費未払情報報告システムとは

訪日外国人の患者さんが医療費を払わずに帰国してしまった場合に、医療機関がその情報を厚生労働省に報告する仕組みです。厚生労働省は集めた情報を出入国在留管理庁に提供し、その人が次に日本へ入国するときの審査に活用します。2021年5月10日から運用されています。

ねらいは、「払わずに帰国すると次の入国に影響する」ことを広く知らせて、未払いを未然に防ぐことです。あわせて、訪日外国人に民間の医療保険(旅行保険)への加入を促しています。

押さえておきたいこと

  • 報告は医療機関の任意の協力によるもので、義務ではありません。
  • 病院だけでなく、診療所も報告できます(保険医療機関として医療機関コードで登録)。
  • 報告された人は、再入国時に厳格な審査の対象になります。厚生労働省のQ&Aでは、上陸拒否の事由に該当し得るとされています。

2026年4月の変更点:登録基準が「1万円以上」に

2026年1月23日の関係閣僚会議で決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を受けて、厚生労働省は2026年2月4日付の事務連絡で、登録の基準額を引き下げました。対象になる外国人の種別や、基準日の考え方は変わっていません。

未収金が発生した時期と、登録の対象になる金額
未収金が発生した時期登録の対象
2021年5月10日〜2026年3月31日累計残高 20万円以上
2026年4月1日以降累計残高 1万円以上

20万円という基準は、入院や手術を伴う高額な未払いを想定したものでした。1万円であれば、外来の初診料に検査代や薬代が加わるだけで届きます。外来中心の診療所でも、制度を使う場面が現実的に生じるようになったといえます。

報告の対象になる患者さんと未収金

報告できるのは、次の3つの条件をすべて満たす患者さんです。

  1. 日本国籍を持たない
  2. 日本に住んでいない(在留外国人ではない)
  3. 日本の公的医療保険に加入していない

日本に住んでいる外国人や、公費負担医療の部分の未収金は対象外です。一方で、通訳料や文書の翻訳料は未収金に含めてかまいません。

パスポートの情報がないと報告できません

報告にはパスポートの情報が必要です。受付の時点でパスポートを確認し、氏名・国籍・旅券番号などを控えておかないと、いざ未払いが起きても制度を使えません。

報告の時期と方法

報告の条件とタイミング

累計残高が基準額以上で、かつ回収の見込みがない場合に報告します。報告の時期は、請求日の翌々月末日を基準日として、その翌月の3営業日以内です。

報告のタイミングの例
請求した月10月
基準日12月末日(請求日の翌々月末日)
入力の期限1月の3営業日以内

報告の方法

  • 厚生労働省のWebシステムで入力します。管理者IDは1施設に1つで、入力担当者のIDは管理者が発行します。
  • 患者さんの同意は、2022年10月11日以降は不要です。ただし、個人情報が出入国在留管理庁に提供されることを院内掲示などで知らせておくことが推奨されています。
  • あとで支払われたら、ただちに回収したことを登録します。登録が漏れると、支払いを済ませた方が厳格な審査を受けるおそれがあります。
  • 最後に未収金が発生した日から、少なくとも5年間は管理を続けます。

数字で見る外国人患者の未収金

厚生労働省が2026年9月に公表した「令和7年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」から、未収金に関する主な数字を抜き出します。調査は全国の病院が対象で、2025年9月の1か月間の実績です。

外国人患者を受け入れた病院の未収金(令和7年度調査)
未収金が発生した病院15.7%(469病院)
1件あたりの未収金中央値 15,000円(平均 160,233円)。70.9%が5万円以下
回収の取り組みを特にしていない87.8%
未払情報報告システムに登録している3.9%(「知らなかった」が42.2%)
クレジットカード決済を導入している66.8%

1件あたりの中央値は15,000円で、7割は5万円以下です。未払いの多くは、入院の高額な請求ではなく外来の小さな金額だということがわかります。基準が1万円になったことで、こうした外来の未払いの多くが報告の対象に入るようになりました。

同じ調査では、京都府と沖縄県の診療所も調べています(回収率は3割弱)。受け入れのある診療所のうち、回収の取り組みを特にしていないのは95.0%、クレジットカード決済を導入しているのは38.4%、未払情報報告システムに登録しているのは0.3%でした。地域が限られた数字ですが、診療所の備えが病院より手薄なことがうかがえます。

診療所の受付でできる5つの未収金対策

未収金は、会計の時点で気づいても手遅れになりがちです。厚生労働省の医療機関向けマニュアルなどで勧められている対策を、診察の前にできることを中心に整理します。

1. パスポートで本人確認をし、連絡先を控える

パスポートで氏名・国籍・旅券番号を確認し、滞在先(ホテル名と部屋番号)、日本で連絡がつく電話番号、メールアドレスを控えます。未払いの連絡や、制度への報告に欠かせない情報です。

2. 保険と支払い方法を、診察の前に確認する

観光庁の調査では、訪日外国人の約73%が民間の医療保険に加入しています。逆にいえば、約4人に1人は加入していません。旅行保険に入っているか、保険会社が医療機関に直接支払う「キャッシュレス」型か、いったん自分で払って帰国後に請求する型か、そして当日の支払いに使うクレジットカードを持っているかを、診察の前に確かめます。

3. 概算の医療費を、理解できる言語で先に伝える

医療機関向けマニュアルは、患者さんが理解できる言語で、書面か口頭で概算の医療費を事前に伝えることを勧めています。金額が変わる可能性があることもあわせて説明します。必要に応じて、前払い(デポジット)をお願いすることにも触れられています。会計で金額に驚かれて揉めるのを防ぐ、もっとも効果のある対策です。

4. クレジットカードで、その場で精算できるようにする

訪日外国人の多くは日本円の現金を十分に持っていません。カード決済ができないと、「ATMで下ろしてくる」と言って戻らないという事態が起こり得ます。その場で精算できる手段を用意しておくことが基本です。

5. 制度があることを、院内に掲示しておく

未払いの情報が国に報告され、再入国の審査に使われることを、受付や問診の時点で多言語で知らせておきます。報告する前提で個人情報の取り扱いを通知しておく意味もあります。あわせて、自院を報告システムに登録しておきましょう。

受付で確認する項目のまとめ

  • パスポート(氏名・国籍・旅券番号)
  • 滞在先・電話番号・メールアドレス
  • 旅行保険の有無と種類(キャッシュレスか、後で請求か)
  • 当日の支払い方法(クレジットカードの有無)
  • 概算の医療費を伝えたこと(書面で残すと安心)

これらを受付のスタッフが英語や中国語で一つずつ聞き取るのは、現実には大きな負担です。DOCTUS VISITORS では、患者さんが受付のQRコードを読み取り、自分のスマホで母国語の問診に答える流れの中で、パスポート表記の氏名・国籍・滞在先・連絡先の入力と、保険・クレジットカードの確認までを診察の前に済ませます。自費であることやパスポートの提示も、来院前に母国語でご案内します。会計も患者さんのスマホで完了するため、支払いを確認してから帰っていただけます。

未払いを理由に診療を断ってよいか(応招義務との関係)

2019年12月の厚生労働省の通知は、外国人患者についても日本人と同じ基準で判断するとしています。主なポイントは次のとおりです。

  • 過去に未払いがあったことだけを理由に、診療を断ることはできません。
  • 支払い能力があるのに悪意を持って払わない場合などは、診療しないことが正当化されます。
  • 保険に入っていないなど、支払い能力がはっきりしないことだけを理由に断ることはできません。
  • 医学的な治療を必要としない自由診療では、支払い能力のない患者さんを診療しないことが正当化されます。
  • 言語や文化の違いだけを理由に断ることは、原則として正当化されません。

つまり、「断る」ことで未払いを防ぐのは難しく、受け入れたうえで支払いを確実にする仕組みを整えることが現実的です。

この記事のまとめ

  • 2026年4月以降に発生した未払いは、累計1万円以上で国への報告の対象になる。診療所も報告できる(任意)。
  • 対象は、日本国籍がなく、日本に住んでおらず、公的医療保険に入っていない訪日外国人。報告にはパスポートの情報が必要。
  • 未収金の中央値は15,000円で、外来の小さな金額が中心。会計の前に手を打つことが大切。
  • 受付では、パスポート・連絡先・保険・支払い方法の確認と、概算医療費の事前提示を。

よくある質問

Q未払いの報告は医療機関の義務ですか?
A

義務ではありません。訪日外国人受診者医療費未払情報報告システムは、医療機関の任意の協力によって運用されている仕組みです。ただし、報告された情報は再入国時の審査に活用されるため、未払いの抑止につながります。

Q診療所でも報告できますか?
A

できます。報告マニュアルでは対象の医療機関を保険医療機関としており、診療所も10桁の医療機関コードで登録して報告できます。

Q日本に住んでいる外国人の未払いも報告できますか?
A

できません。対象は、日本国籍がなく、日本に住んでおらず、日本の公的医療保険に加入していない訪日外国人です。在留外国人は対象外です。

Q報告に患者さんの同意は必要ですか?
A

2022年10月11日以降は不要になりました。ただし、個人情報が出入国在留管理庁へ提供されることを、院内掲示などで事前に知らせておくことが推奨されています。

Q報告した後に支払われたらどうすればよいですか?
A

ただちにシステムに回収したことを登録してください。登録が漏れていると、支払いを済ませた方が再入国時に厳格な審査を受けるおそれがあります。

参考資料

  1. 厚生労働省 事務連絡(令和8年2月4日)訪日外国人受診者医療費未払情報報告システムの登録基準の変更について
  2. 厚生労働省 訪日外国人受診者医療費未払情報報告システム 報告マニュアル(v1.07)
  3. 厚生労働省 同システム Q&A(v1.03)
  4. 厚生労働省 訪日外国人受診者医療費未払情報報告システムについて
  5. 厚生労働省 令和7年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査
  6. 厚生労働省 外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル(第4.0版)
  7. 厚生労働省 応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について(令和元年12月25日 医政発1225第4号)
  8. 観光庁 令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査

DOCTUS VISITORS 編集部

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